病歴・治療歴
2020年08月:右鼻入り口鼻中隔内壁の違和感(カサブタをとってもまたできる。痛み)で、クリニック受診
2023年04月:5軒目のクリニックから、大学病院に紹介状。「粘膜が荒れてるが、大学病院はあなたのような症状の人がくる場所ではない。痛みの原因は分からない」
2023年11月:5軒目のクリニックから、別の大学病院に紹介状。単純CTを撮り、ガンの心配なし。点鼻薬等一切やめて、鼻うがいを励行するようにいわれる
2024年03月:症状悪化。6軒目のクリニックにいくも、原因不明のまま経過観察。
2024年04月:しびれを切らし、再度、別の専門病院に紹介状を書いてもらう。「血管炎か、リンパ腫の可能性、大学病院に行くように」。
2024年05月:専門病院から東大病院に紹介状。
2024年06月:東大病院で「鼻腔ガン、ステージⅣ(T4,N1,M0)」の診断。超選択的動注化学放射線療法を得意とする他院への転院を勧められる。
2024年07月:北大病院で治療開始。陽子線35回(70gy)・動注5回実施。
2024年12月:退院
【関連のエピソード】
<診断まで>
・クリニックでは原因不明といわれ、大学病院では、単なる粘膜の荒れを大騒ぎしている患者のような扱いでした。しかし明らかに自分では異常を感じており、大学病院でガンではないと明言されたあとは、自分では自己免疫疾患を疑いはじめてました。結果論ですが、生検をしなければ確定診断はできないことを医療者と患者が認識共有した上で、大きな病気から否定していくというスタンスで進めなければ、時間を無駄にします。
<治療経過>
■動注(2回終了時点記入)
・治療前はかなりビビってましたが、治療自体はたいした苦痛はありません。
・尿道カテーテルは、深呼吸に合わせて入れてもらえば、ちょっとの違和感で着脱終了です。
・開始時、動脈への痛み止め注射は、やや痛みがありますが、たいしたことはありませんでした。
・カテーテル操作自体は、何も感じません。
・抗がん剤(シスプラチン)は、吐き気止め対策がかなり進んでいて、今のところ、ほとんど悩まされていません。
動注後、抗がん剤排出のため、大量に点滴するのですが、尿量がスムーズに出ることが体調の管理に関係するようです。1回目は結構むくみが出たため、2回目は弾圧ソックスを丸2日脱がずに続けました。あと、ポカリスエットがかなりいいです。
■陽子線(10回照射終了時点記入)
・前提として、私の患部が目に近いので、陽子線のメリット(止める深さのコントロール)を享受できていると思います。
・その上で、「鼻」という私の患部特有のストレスに悩まされています。
治療は1回20分程度ですが、最後の2分頃、強烈な光(強白色から蛍光・紫)が菱形など万華鏡のようにあらわれ、同時に、肉の焼ける匂いがします。
そもそも、治療の必要上、動かないように身体拘束され、マスクをかぶせられ、口いっぱいにマウスピースで呼吸に制約のある中で、この現象が起きると、かなりキツイです。
その頃、むくみのためか鼻閉も起きており、メンタルの危機に陥りました。
・医者に確認したところ、「光は現象として見えているもので、それ自体が視力に影響を与えるものではない」ということでしたが、そもそもこの現象自体起きる患者さんが少ないらしく、現象が何かについてはよくわからないようです。
・対策として、「治療の前後に、窓から並木の緑を眺め、外気に触れ、私の現実はコレだ、と頭に刻み付ける。治療中、光があらわれはじめたら、ひたすら過去の旅行などで訪れた緑の空間を思い浮かべる。鼻呼吸をやめ、匂いをできるだけシャットダウンする」を実行しています。割と効果があり、いまはこれで乗り切るつもりです。
■動注3回、陽子線15回終了時点
・3週目に入り、口の障害が如実に出てきました。日々、食べられるものが減り、味覚が変わり、口内炎ができ、口の渇きがかなりきつくなってきました。
・気にしないようにしていますが、耳鳴りが出てきた気がします…。
・突然、髪の毛が抜け始めました。後頭部の首に近いエリアなので、放射線の当たっている箇所だと思います。
■動注4回、陽子線19回終了時点
・「治療効果」
◎4回目の動注時に、リンパへの転移の消失を確認したので、次回からはリンパへの動注は行わない
◎鼻中隔の腫れが、回を進めるごとに薄く・真っすぐになってきた。ガンの縮小か、単にむくみの消失かは、容易に判断できないが、いいニュースではある
◎入院前は、前歯が浮いている感じがあったのが、消失した(私の主観)。画像上も空洞が確認できている。
・「今後の予定」
◎動注は最低実施予定の4回はクリアした。この後は、血管次第で回数が決まる。
鼻の血管は細いのでダメになりやすい。
ガンの縮小により血流がなくなるのが早いか、抗がん剤の悪影響で正常な血管がダメになって動注ができなるのが早いかで、これからの動注回数が決まる。
毎回様子をみて決めていく。
・4週目に入り、上唇が腫れあがり、上口蓋の炎症が悪化。おかゆとプリン、飲料以外は食べられなくなりました。おかゆも、すでにキツくなってます。
・上顎壊死の可能性の話が出てきました。治療中というより、終了後~1年程度の話のようです。
◎患部(鼻から上あごにかけてのガン)が消失して空洞ができると、上あごから鼻内部にかけて穴があくかも。
◎前歯上の歯肉が壊死?するかも。
・心が折れかけ、試しに、放射線は35回全部やらなきゃダメか、放射線の医師に聞いてみました。
医師「今やめたら、ガンが残ったままで上あごが壊死し、悲惨になるだけ。ガンをたたいて上あごが壊死するほうがいい。」
私「わかりました。あとは私の心の強さだけですね」
医師「心は強くなくていい。この治療はみんな辛い。僕だって、同じ立場になったら心が折れそうになる。」最後は、医師が涙ぐんでました。ありがとう…
・毎日の放射線のストレスがきつく、窓から緑を眺めるだけでは、心が回復しなくなってきました。
コロナ感染対策のため、入院患者は病院から出られないのですが、
特別に短時間の外出許可をもらい、並木道を歩き、土の匂いや風、天気の変化を感じる時間をつくって、
放射線の空間ではなく、この緑の空間が自分の現実だと、毎回心に刻んでます。
正味15分ほどですが、涙がバーッとでて、リセットされ、自分を取り戻してます。
病院には本当に感謝しています。
■動注5回、陽子線29回終了時点
・動注は、5回で終了することになりました。動注の造影画像では、腫瘍は消えており、正常組織への血管がダメージを受けるデメリットのほうが大きいという判断です。
・正常組織への血管ダメージが大きかった場合、最悪、鼻が落ちる(=壊死して、もげる)。
個人差が大きいので、私がどうなるかは、経過をみないと分からないとのこと。
・上口蓋の荒れ、鼻腔の荒れがひどく、絶食状態で点滴。薬だけは飲水してます。移動は車いす。
・抗がん剤の副作用はもう治まる時期ですが、かえって吐き気がひどくなり、毎日吐いてます。出る内容物がないので、胃液と唾液のみ。
<治療終了~退院までの約3か月>(副作用、後遺症等)2024.12記
◎鼻①ーー鼻呼吸ができず、長く息苦しさに悩まされたが、退院時にはかなり改善された。
・大量の痂皮:息苦しさの最大の原因。毎日朝晩医者に処置してもらわねば痂皮がとれず、長期の入院になった。鼻うがいは医療上1日6回までとされるが、入院中、ある程度の回数超えは黙認された。生理食塩水・ビソルボン・リンデロン吸入。薄紙をはぐように少しずつ状態が改善し、退院する頃(治療終了から3か月程度)には6回以内でセルフケアができるようになった。
・右鼻の鼻閉:奥の孔がどんどん狭まり、治療終了から1カ月程度で塞がりそうに。息苦しさが増す。無理矢理こじあけて、経鼻エアウェイ(チューブ)を挿入してもらう。2週間~1カ月程度で鼻うがい可能な程度に広がった。
・鼻中隔穿孔:治療終了後、1カ月程度で出現。前兆として痂皮がやたら固くこびりつく箇所ができ、しばらくしたら孔があき、どんどん広がった。病巣が壊死した結果とのこと。気流の流れが変わり、新しい息苦しさに悩まされたが、退院する頃には慣れた。抗がん剤・放射線治療をしているので、閉鎖手術は生涯推奨しないとのこと。
※息苦しさで夜もまったく眠れず、心身に堪えた。痂皮が鼻道をふさぐ上、鼻と口蓋の汚れが喉に流れ込んで窒息しそうになるため、横臥できず、夜間も座位で過ごす。状態が改善するにつれ、次第に小刻みに睡眠がとれるように。
※治療終了から1カ月頃、メンタル不安定に。大量の痂皮に加え、この頃、右鼻の鼻閉と鼻中隔穿孔がおき、息苦しさの先行きが読めず不安増大。神経科にかかり、抗不安薬を処方してもらう。状態の改善につれ、メンタルも改善。
※ビソルボンは本来、喉用だが、流用で鼻に吸引し、個人的感覚ではこれがもっとも清掃効果があった。
※退院後の懸念は、鼻中隔穿孔の今後。今以上に広がって鞍鼻が起きると、呼吸に問題が起きる。通常は形成手術を行うが、ガン治療後で手術は困難なため、対応策はなし。
※嗅覚は、一時6割程度まで回復した気がしたが、退院時は3~4割程度。この間、ごくたまーに、治療前のような匂いを感じるときがあった。改善していくとよいが…。
◎鼻②ーー鞍鼻
・治療前、すでに表面に出ていたしこりのため、鞍鼻が出現していた。これが治療後、表面に傷のように残った。美容面では問題大アリだが、鼻呼吸の機能面では影響ないので、放置する
・今後、鼻中隔穿孔部の拡大による鞍鼻の懸念は、上述の通り
◎鼻③ーー痛み
・治療中、治療後ともに、痛みはコントロールできていた。治療後1カ月頃まで、カロナール、オキシコンチン、オキノームを使用。中止後も離脱症状等なし。
・退院後、たまに痛みが出るが、寒さや乾燥なども作用するので、気にしなくてよいとのこと。痛みが出た時のみ、頓服でカロナールを服用。
◎耳ーー退院時の聴覚(主観)、左9割・右10割
・滲出性中耳炎(左):治療終了から2週間程度で出現。放射線治療の影響で水がたまる。カルボシステイン内服のみで3か月程度は様子見とのこと。退院時にはある程度改善し、左の聴覚は最悪時点で5割程度→9割程度に戻った。
・耳管開放症(左):高カロリー輸液をはずしてから体重が急減して、発症したもよう(治療終了1カ月後頃)。中耳炎との併発。体重が戻れば改善すると言われ、漢方等の処方は見合わせ。
◎目ーー
・視力:左の視力低下を感じる(治療終了直後より)。表面に細かい傷がついたとのことで、今後、白内障に注意して経過観察。
・流涙:まず左目に流涙症状が発生し(治療終了2か月半頃)、2週間して右目にも発生。放射線治療による鼻涙管狭窄・閉塞。チューブ留置・涙嚢鼻腔吻合術などの対応策あり。自然治癒する場合も多いので、数カ月は様子を見るとのこと(2024.12、北大眼科)
◎口ーー開口運動や唾液マッサージ、清掃やうがいを励行。
・上唇:放射線が大量にあたった鼻先端~上唇が腫れあがり、引き攣れ感や痛み。次第に治まったものの、退院時にも若干残る。
・前歯:浮いている感じ。時々痛み。将来的に歯肉後退や壊死、抜歯などの影響が出そう…。
・上口蓋:治療終了から1~2週間が最悪のただれで、メンタルにくる。修復のためか、大量の唾液が出ていた。その後、急速に修復。
・唾液:上口蓋が修復された頃から、唾液が急速に減少。治療前の5~6割程度。
・味覚:治療終了から2週頃、おかゆは「じゃり」(食品に感じられず)。3週頃より少しずつ摂取品目を増やす。2か月頃、野菜の単品はだいぶ味覚回復。肉・魚は唾液が少なく食べられず。退院時の3か月頃から外食等で摂取メニューを増やしたが、皆、同じ味に感じられ、へこむ。
・口内炎:治療中より、特に右側に多頻度で出現。2~3度医師に相談したが、再発等の兆候ではないとのこと。
◎皮膚ーー
・治療中~終了直後:鼻を中心に顔と首に赤味→黒く色素沈着。ヘパリンローション。皮膚の爛れは起きなかった。
・終了~2か月:色素沈着が次第に改善。ヘパリンローション。
・2か月半頃:顔全体の赤味、皮膚の乾燥・角化、顔と首のかゆみが出現。放射線治療の晩期障害とのこと(北大皮膚科)。ヘパリンローション中止(血管拡張作用があるので、かゆみが促進される)。身体用のレスタミンは顔・首不可。保湿は市販のNOVローション(自費購入)、皮膚の角化は尿素クリーム(処方)、かゆみはステロイドのロコイド(処方)。→1週間程度で改善された。退院後、CT検査の後、再度赤味出現。放射線に反応するのかも…
リハビリ・復帰歴
2024年12月:治療後、最初の効果判定。CT、MRI、PET-CT、ファイバー。「追加治療が必要な所見なし」で経過観察に入る。
治療を受けた病院
北海道大学病院
【関連のエピソード】
超選択的動注化学放射線療法。日本で?世界で?一番実施数が多い機関とのこと。チーム連携ですが、各科医師から看護師さんまで皆、非常に手慣れており、安心して治療を受けました。
病院に対する満足度
とても満足